日当たりで失敗しない土地探し・間取り・窓配置の3つのポイント

住宅を建てる時、土地選びを誤ったり、周辺環境を考慮せずに設計したりすると、日当たりの悪い家になってしまいます。土地探し・間取り作り・窓配置では、周辺環境を入念にチェックする、設計者に日当たりを重視していることを伝える、日当たりシミュレーションを行うことが大切です。

時間をかけてじっくり検討したはずなのに、いざ完成した家に住んでみたら、何だか日当たりが悪い…と後悔するケースは決して少なくありません。

完成した新築の日当たりを改善するには、大がかりなリフォームが必要になるケースもありますので、設計段階から日当たりの良い家づくりを目指すことが大切です。

仕事で月間5〜10件の日当たりシミュレーションをしています。その中で気が付いた、日当たりでよくある失敗ケースと、日当たりが良い家作りのコツ、設計中の建物の日当たりを改善する方法についてご紹介します。これから家作りをする方には必須の情報です。

日当たりで失敗してしまった家作りの3つの事例

新築の日当たりで後悔するパターンは複数ありますが、ここでは特によくある事例を3つご紹介します。

1.日当たりの悪い土地を選ぶ

新築を建てる、あるいは建売住宅を購入する際、必ず現地に行って、日当たりの良さを確認します。日当たりは季節や時間によって異なります、日当たりが良い土地かどうかは行った時だけの情報では正確に把握することができません。新築を購入する前に現場に数回しかいかないってことがほとんどですので、日当たりを理解している方は少ないです。太陽の位置が高い夏に日当たりをチェックすると、春や秋冬に「思ったより日が当たらない」と不満を感じる原因となります。

 

2.窓の大きさや位置を間違える

設計段階で起こりやすい失敗例のひとつが、窓の大きさや位置を間違えるケースです。日が差し込みにくい北側に窓を設置したり、部屋に対して窓のサイズが小さすぎたりすると、部屋全体に光が行き渡らなくなります。

 

3.周辺環境を考慮せずに設計する

日当たりの良さは住宅そのものの造りだけでなく、周辺環境にも大きく左右されます。たとえば南側の壁と隣家が密接している場合、いくら大きな窓を取り付けても、隣家に太陽光が遮られて十分な採光を取れないことになります。また、隣接する土地が空き地になっている場合は、将来そこに建物が建つことも予測しなければなりません。

隣が空き地のときは日の光がたっぷり降り注いでいたけれど、家が建ったらまったく日が当たらなくなったという事例も少なくありません。今だけでなく、将来の変化も考慮する必要があります。建売屋さんや不動産屋さんは日当たりの良い敷地を残して日当たりの悪い側から売ろうとします

土地の敷地選定アドバイスの業務を行っていると「造成地の敷地AとBどちらが良いでしょうか?」という相談があります。「敷地Aが良いですね」と回答すると「業者からは敷地Bを勧められました」ということが頻繁に起こります。建物が建った後に日当たりの悪い敷地が残っていたらだれも買いません。そのようにならないためには建物が建つ前に日当たりの悪い敷地を売ってしまおうということだと考えます。悪意ではなく自然な考え方だとも言えます。

日当たりシミュレーションでアドバイスをいたします 敷地選定でどちらが日当たりが良いか迷っている方へ

日当たりが良い家作り3つのポイント

日当たりが良い新築を建てる、または探すときに押さえておきたいツボを3つご紹介します。

1. 現地に出向いて確認すること

土地選びや家探しのために現地をチェックする際は、土地の面積や形、家の状態やデザインだけでなく、その周辺環境もよく確認しましょう。子育て環境がいいか、小学校や中学校が近くにあるかなど生活環境をチェックすることも大切ですが、周りの建物に目を向けることが大切です。
敷地の周辺に日の光を遮るような高い建物はないか、隣家との間にどのくらいの距離を取れるか、庭木が日当たりの邪魔になる心配はないかどうかなどです。

サンサーベイヤーで太陽軌道チェック

敷地選びに現地に出向くときには、スマホにサンサーベイヤーなどの太陽軌道を表示できるソフトをインストールしておいて、現地で冬至、夏至、春秋分の季節ごとの太陽の軌跡を表示して確認することをおすすめしています。

具体的な方法は、日当たりシミュレーションの記事を参照してください。

用途地域調査で将来予測

周辺に十分な面積のある空き地がある場合、将来マンションなどの高層物件が建つ恐れもあります。第一種低層住宅専用地域など大きな建物が立たない地域だと安心です。けれども敷地の南側に別の用途地域があったりしますので周辺の状況もチェックしておきましょう。

 

用途地域とその調べ方と最強の方法

敷地の用途地域は不動産の資料に記載されていますが、周辺の用途地域の情報は乗っていないのが普通です。敷地に近いところにビルやマンションが建っているようなケースでは、すぐ南に高層の建物が建つ恐れもあります。
インターネットで「〇〇市用途地域地図」と検索して用途地域や高さ制限を調べてみてください。商業系や中高層住居専用地域などの場合は要注意です。

用途地域の調べ方最強の方法は、市町村の建築指導課を訪ねて聞いてみることです。住民票を取りに行くような気持ちでいきましょう。昼食後の気分の落ち着いた時がベストです。お茶は出してくれませんが丁寧に教えてくれます。

「この土地を買って家を建てようと思っているのですが、家を建てた後に南側に大きなビルやマンションが建つ恐れはありませんか?」と気になっていることを聞いてみましょう。ほかにも造成地の場合、以前田んぼではなかったか、勾配のある土地だったら近くのがけ崩は大丈夫かなど、いろいろ聞いてみてください。

質問したこと以外にも参考になる情報が得られるかもしれません。打ち合わせした日付と担当の方のお名前を控えておいて、後日追加で相談できるように人間関係を作るようにしておきましょう。

 

日当たり君で将来予測

「日当たり君」というフリーソフトを使うと、隣家やビルが立った場合の日当たりを調べることができます。

日当たりシミュレーションの記事に詳しく書きましたのでご覧ください

2.日当たりを意識して設計する

日当たりシミュレーションの仕事をしている中で気づいたことがあります。日当たりで失敗している方は、日当たり以上に動線や収納やデザインなどへのこだわりが強く、設計段階で日照の優先順位を低く見ていたということです。
失敗しないためには「家作りにあたって常に日当たりのことを考えておくこと」です。

日当たりの失敗は要望書に「日当たり重視」と書かないから

家作りを始めるときに「要望書」を書くことをおすすめしています。要望書を拝見すると、奥様はキッチン、収納、家事動線、ご主人は建築のスペックにこだわるという傾向があります。それはそれでとても大切なことですがこの段階で「日当たり重視」を要望書に加えることをおすすめしています。

設計者は要望書にある内容をクリアするのが精いっぱいで要望書に「日当たり重視」と書いていない場合には、日当たりと他の要素を比較して日当たりを軽視する判断をすることもあります。打ち合わせでも「日当たり重視」でお願いしますと繰り返しインプットするようにしてください。

設計者をチェックしよう

要望書に「日当たり重視」と書いてあってもどうしたら日当たりの良い家にできるかわからない設計者もいます。恐ろしいことですが事実です。中には「日当たりを気にするなんて古い考えだ」という設計者にも会ったことがあります。日当たりのことが分かっている設計者かどうかは一つの質問でわかります。
「図面のどこから日が上がってどこに日が沈みますか?」と太陽軌道の知識を確認してください。そして南側の建物の日影がどのようにかかってくるかも聞いてみてください。
知っていることが当たり前ですが、即答できなくても調べて回答してくれる方なら合格です。口先でごまかす方はこれから先何を打ち合わせしてもごまかす方ですので要注意です。

日当たりが良い家の3原則

設計者があてにできない場合でも、住まい手が次のことを知っていると日当たりの良い設計になるよう設計者に指示することができます。当たり前のことなのですぐに覚えることができます。

日当たりが良い家の3原則は以下の通りです。

  • 南側の隣家の影から逃がして北側に寄せて建物を建てる。1階の配置だけでなく、2階3階の建物の位置も北側によせる
  • 日が当たる南面に窓を付ける。外壁に日が当たるだけでは有効な日射取得はできないので日が当たる場所に窓を付ける
  • 南面の凸凹を無くして自己日影が無いようにする

詳しくは別記事の「日当たりが悪い住宅に住む5つのデメリット!知らないと損をする改善方法」をご覧ください。

3. 設計の初期段階と決定前に日当たりシミュレーションを行う

図面とにらめっこしながら、細部にわたって設計したつもりでも、いざ完成してみたら日が当たらない建物になってしまったというケースは少なくありません。こうした失敗を防ぐには、事前に日当たりシミュレーションを行うのが有効です。

 

設計初期段階のシミュレーション

設計初期段階のシミュレーションは、近隣の建物の影がどのように敷地にかかってくるかを調べるものです。敷地を立体的に区切って隣家の影の濃い部分と影の少ない部分が分かります。影の掛かりにくい部分に建物を建てて、窓を付けると日射取得しやすくなります。

 

日射取得できる窓の位置にリビングやダイニングなど家族が集まる部屋を配置すると明るい団らんのある家が出来上がります。

 

設計完了前のシミュレーション

設計初期段階のシミュレーションに沿って設計すれば大きな間違いはないと思われますが、間違いなくできているかの確認と、窓の位置など詳細な検討をする必要があります。

 

3Dマイホームデザイナーで外壁に当たる隣家の日影と各階の床への日射しを春秋分、冬至、夏至の各季節の動画で見える化して確認することが出来ます。

 

詳しくは「日当たりシミュレーションで安心!日当たりの良い土地選びと住宅設計」の記事を参照してください。

下のリンクから日あたりシミュレーションのサービスを購入いただくことができます

図面から一目で解る日照動画を作り改善案を提案します 「こんなに日当たりが悪かったなんて」と後悔したくないあなたに

 

 

【まとめ】

日当たりで失敗しないためのポイントを押さえておきましょう
日当たりで失敗しない土地探し・間取り作り・窓配置のポイントは

  • 周辺環境を入念にチェックする
  • 設計者に日当たりを重視していることを伝える
  • 日当たりシミュレーションを行う

の3つです。
設計にあたっては日当たりの良い家3原則に沿って設計することが大切です。

日当たりが良い家の3原則とは

  • 南側の隣家の影から逃がして北側に寄せて建物を建てる
  • 日が当たる南面に窓を付ける
  • 南面の凸凹を無くして自己日陰が無いようにする

ということです。日当たりで失敗しない家づくりについて書きましたが、家作りは日当たりだけが大事なわけではありません。バリアフリーにすることを優先したり、特別な景観を重視したり、たくさんのご希望を調整する中で「こんなはずではなかった」と思わないようにしっかりと検討して進めてください。

この記事を書いた人

atoriekojima