「北側道路縦長敷地」初めての家作りの方にはちょっと不思議な表現かも知れませんね。
縦長というのは建築の配置図や平面図は北を上に描く
という一般的な決まりごとの中で
南北に長く東西に狭い敷地は
縦長になる事からこのように表現しています。
縦長敷地の特徴と攻略法を実例を挙げて考えて行きたいと思います。
2階リビングにする事でメリットの出やすい敷地ですが
2階リビングの計画については別の記事でご紹介します。
北側道路縦長敷地
縦長敷地とは
「北側道路縦長敷地」の北側道路に関しては説明がいりませんが
縦長敷地はちょっと説明が必要ですね。
建物の規模にもよりますが
縦に細長い敷地でも幅が10m以上あれば
間取り作成にそれほどの制約にはならないので
あえて縦長敷地と呼ぶことは無いと思います。
縦長敷地と呼ぶのは横幅10m未満位の敷地で
建物が南北に長くなり南からの日照が得にくいような敷地
と言えます。
北側道路縦長敷地の問題点
北側道路縦長敷地は南側道路縦長敷地に次いで間取りの難しい敷地です。
問題点は
- 日照を期待したい南側の敷地の幅が狭く日照が得にくい事
- 南側には隣家が迫っていて1階の南側の窓の効果が少ない事
- 東西に敷地境界が迫っていて採光上有効な窓にならない事
- 間口が狭いので建物が干渉して駐車スペースが取りにくい事
といったところでしょうか。
北側道路縦長敷地攻略法
北側道路縦長敷地の攻略法として共通して考えられるのは
- 南側にまとまった空地を取る事
- 駐車は道路に平行に1台+直角に1台
- 高気密高断熱の家であれば南側のまとまった空地に面して吹き抜けを作る
といったことが挙げられると思います。
南側にまとまった空地を取る
南側にまとまった空地を取る目的は
- 光と風を取り入れる事
- 開放感を演出する事
という事で、
敷地の形状にもよりますが最低でも1.8mの奥行にしたいものです。
光と風を取り入れる
南側にまとまった空地を取る目的の第1は建物に光と風を取り入れるためです。
南側隣地の情況によっては上手くすれば日照の恩恵にあずかることも可能です。
開放感の演出=抜けを作る
南側にまとまった空地を取る目的の第2は開放感です。
北側の道路に面した玄関からLDKに入った時に
LDKの窓の外が隣地との境の塀しか見えなかったらどうでしょう?
チョット息が詰まる感じですね。
小さくても良いのでデザインされていると感じさせられる
坪庭があると広さが感じれれます。
このことを「抜け」と表現する人もいます。
駐車は道路に平行に1台+直角に1台
駐車台数が1台の場合は道路に平行に1台
「駐車スペース」を考える時に道路に直角(縦置)とだけ考えると
設計の自由度が下がります。
図のように縦置きにすると建物に使える部分が細長くなります。
横置きにすると建物に凹が無くなりプランしやすくなります
駐車台数が2台の場合は道路に平行に1台+直角に1台
2台目が必要な場合には道路に平行に1台+直角に1台駐車スペースを設けます。
図のように縦長敷地で縦置き2台だと
建物に使える部分がほとんどなくなります。
ただこれらの事は一般論で
プランの仕方によっては効果的に使えることもあります。
一つの考えに支配されないで自由に発想して見ることが大切です。
吹き抜けを作る
1階にLDKを設ける場合に
居室に必要な有効採光面積(床面積の1/7)が1階部分の窓だけでは確保できないことがあります。
そんな時には吹き抜けを設けたりトップライトを設けたりして
不足分を補う操作をすることがあります。
法律だけの問題ではなく
吹抜がある事で閉塞した空間ではなく開放感のある空間が作れます。
また高い位置についた窓=ハイサイドライトからの光がLDKを明るく快適な空間にしてくれます。
画像は実例に取り上げたS邸のリビングです。
テーブルとソファーに日が当たっているのが見えますね。
これが冬至の正午の日照です。
1階の窓が南側隣家の陰になっても
ハイサイドライトからの日照が得られるケースです。
建物の断熱性によっては「吹抜を作ると足元が冷える」という事があります。
吹抜はその位置や大きさのほかに設けるかどうかを含めて注意深く計画する必要があります。
北側道路縦長敷地の設計実例
北関東のS邸の例をご紹介します。
北側道路縦長敷地
敷地は東西8.5m南北19.5m約165㎡約50坪の大きさです。
自治体の開発に関しての条例で50坪以上が確保されています。
もちろん北側道路です。
施工は高気密高断熱を得意にしている工務店さんです。
設計条件
家族構成
夫婦、子供2人将来もう1人希望、将来片親同居可能なように
6人の家族で住める事
所要室
【1階】
LDK+和室6帖、浴室、トイレ
シューズクローク、ファミリークローク、パントリー希望
スタディコーナー、主婦コーナースタディコーナーと兼用
勝手口
【2階】
寝室、子供室3室、トイレ
室内干しスペース
その他希望事項
家事がしやすい様に
子供はLDKで育てるので子供室は小さくても良い
来客が多いのでフレキシブルなLDK+和室
といったご希望がありました。
配置計画
北側道路縦長敷地の攻略法の
- 南側にまとまった空地を取る事
- 駐車は道路に平行に1台+直角に1台
で計画しています
坪庭
リビングの南側に奥行1.8mの坪庭を設け
南側からの採光、日照、通風を取り入れるようにしました。
坪庭ことで空間の抜けを作り開放感を演出します。
坪庭とリビングの間は掃き出しサッシとFIX窓で
全面ガラスにして一体感を持たせています。
この部分は構造壁が不足するので
門型フレームかスマートブレースの使用が必要となります。
※門型フレーム、スマートブレースに関しては下の記事をご覧ください
耐震・制震・免震・減震その解説とおすすめ~地震に強い住宅①~
1階平面計画
リビング+和室
リビングの上部は吹抜にして
LDK+和室6帖に日照と通風を取り入れます。
和室は引き込み戸でリビングと一体に使えるようにして
パーティなどの来客に対応できるようにしています。
家事動線
キッチン→パントリー→FCL→洗面→浴室
を一直線上に並べ最短の移動で済むようにしています。
パントリーは勝手口ドアを設けてサービスヤードに
出られるようにしています。
2階平面計画
階段を上がったところにフリースペースを設け
室内干しへの対応をしています。
子供室は当面は大きな一部屋にして将来区画できるようにドアを2か所設けています。
子育て計画
現在お子様がお二人。将来もう一人ご希望。
子供はLDK+和室で育てて
子供室は寝る時と受験勉強の時だけ利用する
というのがご夫婦のお考え。
共有部分を広く取って子供室は小さめです。
子供室も個室が必要になるまでは間仕切りを付けない予定です。
3人目のお子様の個室が必要になるまでは
しばらく時間がありますので
寝室を広く取っておいて必要な時期に簡単に区画するように考えています。
北側道路縦長敷地の攻略法まとめ
S邸では北側道路縦長敷地の攻略法の
南側にまとまった空地を取る事
駐車は道路に平行に1台+直角に1台
吹抜を設ける
の3つを採用する事で快適な住宅の計画が出来たと考えます。
今回のケースは比較的状況が良かったと考えます。
住宅の設計ではどの様なケースにも適応できるセオリーはありません。
たくさんの方法を知り多様なアイデアを出すことで解決への道筋が探し出せると思います。
この記事があなたの住まい作りのお役に立つことを願っています。