狭小住宅の間取り 日照改善3つのツール その2バルコニー

「狭小住宅の間取り日照改善3つのツールその1」では
光庭(ライトコート)光井戸(ライトウエル)をご紹介しました

この時には1階の地面にも日照がありそうな場合を主に考えました

 

今回は2階のバルコニです
狭小住宅だからバルコニーなど作らないで
1ミリでも広い部屋にしたいというお気持ちもわかります
狭小住宅は狭いと思い込み1ミリでも広くしようとする気持ちは
貧しい家を作ることになると思います
狭小住宅を作るという考えではなく

あくまでも快適に住むことができる家を作ることに意識してほしく思います

諦める前に敷地周辺の環境を確認してみてください
隣家と隣家の間の隙間から日照があって
以外と日当たりが良かったりすることもあります

 

前回はそのように書きましたが
今回は南側の家の屋根越しに空間が開けていたらという場合に有効なお話です

狭小敷地の場合多くは2階リビングです
隣家の屋根越しの光や隣家と隣家の間の抜けなどを考慮すると
日の当たるバルコニーができることもあります
南向きで日の当たるバルコニーができる場合には
各部屋を1ミリでも広くしたいという気持ちを抑えて豊かな生活のために
はちょっと心に余裕を持って考えてみてください。


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1、南側バルコニーの有効なケース

南側バルコニーはどんな場合にも有効というわけではありませんが
第一種高度地区という住宅地に多い高さ制限のある地域ではとても有効です

第一種高度地区はこんな感じです

第一種高度地域断面
第一種高度地域断面

第一種高度地区の建物の高さは
・敷地境界では5m
・そこから真南に向かって1mごとに0.6m上がる勾配の範囲内
に収める必要があります

一種高度地区の土地で南側を見るとこんな感じになります

第一種高度地域
第一種高度地域

第一種高度地区内では南側隣家は地面から屋根までが約5m
そこから6寸勾配で屋根をかけている家が多くあります
こちらの敷地から見ると上の図のようになっています

断面
断面

断面で見ると上のような感じで
住宅の2階の床は地面から約3.5m位ですので5mとの差は1.5mです
大体大人の目の高さ位ですから隣地境界から2m位の距離を取れば
あまり圧迫感はありません

2、南向きバルコニーのメリット

メリット1、空間の広がり

部屋の中にいて窓までが自分の領域と感じるよりも
その先の窓の外に自分のための空間があることが
気持ちを豊かにします

牢獄のような小さな窓で終わってしまうのではなく
外に出て深呼吸できる自分だけの空間があることは大切なものです
あまり良い例ではないかもしれませんが
クルーズ船で考えてみましょう
ダイヤモンドプリンセス
ダイヤモンドプリンセス
クルーズ船は中央に大きな吹き抜けがあり
吹抜を取り囲むように客室があります
客室は中廊下型で吹抜に面した部屋と海に面した部屋があります
海に面した部屋にはバルコニーがあります
上の図は武漢肺炎で有名になったダイヤモンドプリンセスの海側の客室です
多くの面積をバルコニーに割かれています

バルコニーに出て海の風を受けながらの航海は素晴らしいものに違いありません
海から昇る朝日や海に沈む夕日は大いなる自然に生かされている
自分の生命を感じる機会になるでしょう

吹抜に面した部屋はその魅力がないので
外向きの部屋よりも安くなっています
バルコニー付きの部屋でもそんなに大きくはないですね

1ミリでも大きな部屋にすることが快適ならば
クルーズ船でもバルコニーを付けることはないでしょう
部屋の面積を削ってもバルコニーを付けることを選択しているのは
その方が快適だからです
あなたの家のバルコニーでは
海から昇る朝日や海に沈む夕日は見ることができませんが
空を見上げてバルコニーにたたずんでみるのも
良い時間になると思います

メリット2、日照の温熱効果

上で紹介した第一種高度地区の断面で作成したバルコニーには
どの様に日照があるでしょうか?
検証してみましょう
下の動画は第一種高度地区の狭小住宅のバルコニーを南側隣家の屋根の上
冬至の12時の太陽の角度から見たアングルの日照動画です
場所は東京で設定しています

朝から14時頃まで良く日が当たっています
最も太陽高度が低く日当たりの悪い冬至です
最も寒い1月後半から2月中頃にはもっと日当たりの良い状況になります
関東地方では冬の日照を1.8mx1.8mの窓で受けると
600Wの電気ストーブを点けた時と同じ量の
エネルギーを建物に取り入れることが可能です
法定耐用年数の22年だけでも相当額の暖房費の節約になります
ローン返済の一部に回すことが可能です
腰窓にすると半分の日射取得量になるので
日照が得られる場合には掃き出し窓をお勧めしています
日照の温熱効果については下のブログに詳しく書きました
参照ください
知らないと必ず後悔する!方位で変わる日照の効果

メリット3、目隠しの設置

狭小住宅の場合隣家との距離が近く
プライバシーを侵害される恐れが発生することもあります

隣地境界から1m以内だと民法を根拠に
窓に目隠しをしてくださいと言われることもあります
目隠しを設置するのに窓から50~100mmのところだととてもうっとおしいですね
目隠しの位置がバルコニーの先端の900mm~1000mmになると
うっとおしさが改善され目隠しの上からの光も入ります

バルコニー春分12時
バルコニー春分12時


上の画像は動画の物件の2階リビングからバルコニーを見た画像です
部屋からは空が見えて先端についている目隠しも閉鎖的だったり
圧迫感を感じたりすることがなく
日当たりにも大きな問題がないことが分かります

 

自分でコントロールすることができるフェンスができるのですから
そこも生活を彩る装置になります
アイストップのハンガープランターなどを置けばより豊かな空間になります

 

メリット4、物置機能

2階リビングの家ではごみ置き場に困ることがあります
ゴミ出しの日までのちょっとした時間
部屋の中に置くのはうっとおしく
玄関も手狭になってしまうそんな時に
ちょっとの時間バルコニーを活用することができます

 

メリット5、屋外機置き場

 

言うまでもなくエアコンの屋外機置き場としても利用されますね

3、南向きバルコニー設置のデメリット

メリットを書きましたのでデメリットも書かなければいけませんね
・若干のコストアップ
・若干の雨漏りの危険度アップ
・若干のメンテナンスの手間が増える
などが無いわけではありませんが
メリットを打ち消すほどのものはありません



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まとめ

 

狭小住宅に快適に住む日照改善3つのツールとしてバルコニーをご紹介いたしました
バルコニーができる空間があれば
1ミリでも部屋を広くしたいという気持ちもわかりますが
建築士として広大な住宅から狭小住宅までたくさんの実例を見ていると
部屋を1ミリでも広くする意味は大きくなく
6畳の子供室を4畳にしてでも

8畳のリビングを6畳にしてでも
バルコニーを付けた方がメリットが大きいと考えます

この記事を書いた人

atoriekojima