狭小住宅の間取り 日照改善3つのツール その3 ルーフバルコニー+ハイサイドライト

狭小住宅の間取り 日照改善3つのツール その3 は「ルーフバルコニー+ハイサイドライト」です
ハイサイドライトについては以前
ハイサイドライトとは?有効な利用法、デメリットと対策(建築士の道具箱
という記事で紹介させていただきました
普通の窓の高さでは光が入らないようなケースで
普通の窓より高い部分に窓を付けて採光する方法です
狭小住宅で普通の高さに窓を付けたのでは有効な光が入らないときに用いるツールとして有効です
今回は3階部分にルーフバルコニーを付けセットバックした壁面に
2階リビングの吹き抜けのハイサイドライトを付ける
というものです


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1、究極の日当たりの悪い敷地

路地状敷地
路地状敷地
路地状敷地といえばL字型が多いですね

今回のケースは珍しいT型、金づち型でした

上の図のように南には3階の屋根まで垂直に切り立った壁
東面にも同じような壁
西面にはかろうじて2階の高さの屋根

ところがこの部分も同じ業者の分譲になる予定とか…

路地の部分が長い場合では土地の建蔽率や容積率を有効につかうためには

金づちの頭の部分にはできる限り敷地いっぱいに立てる必要があります

 

工務店さんの設計では
金づちの頭の部分は敷地境界から500mmの離隔しかありません
隣家も同じ工務店の同じような規格で敷地境界から500mmの離隔です
壁から壁まで約1mの離隔で東と南の2面が壁になっています
北からの日照はありませんし
西も期待できる状態にありません

 

さらに厳しい条件として斜線制限の緩い地域で
南側の建物に斜線制限のセットバックがありません
隣家も同じ3階建てで3階の窓でさえ1m先に壁があります
法規上の採光に有効な窓は路地に面した窓だけでした

2、それでもほしい日照

「このよう状態でも日照が欲しいので
南側からの日照を取り入れることはできませんか?」
とのお問い合わせでした
・日当たりが得られる南側に抜けを見つけることはできません
・南の隣家の屋根に斜線制限がなく3階部分まで壁があります
光井戸や2階バルコニーを作るのにはその空間を作る余裕が必要です
1、2階に外部空間を作る面積の余裕はありません
「この状態では日あたりを望むのは無理です」といったん回答しかけたのですが…

3、ここでも役立つ日当たり3原則

もう一度、日当たり改善3原則をみなおしました
日当たり改善3原則は
・南の建物の日影から逃げて建物を北にずらす
・南に窓を付ける
・南面に凸凹を付けない
ですね
そして気づきました建物を北にずらすことはできなくても
若干空間に余裕のある3階部分だけ北にずらすことができる
そのセットバックした南面の壁に

2階のリビングの吹抜のハイサイドライトを付ける方法です

こうすると2階のリビングの吹抜のハイサイドライトからは
南からの日当たりを得ることができます

太陽高度の低い冬至には吹き抜けの腰あたりに日が当たって
2階の床には日差しがありませんが建物全体の日射取得として有効です
何よりも直射日光の非常に高い照度を得ることができます



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4、最強のツール ルーフバルコニー+ハイサイドライト!

ルーフバルコニー+ハイサイドライトの計画案で
日当たりシミュレーションをしてみると
ハイサイドライトからの日照春秋分2階
ハイサイドライトからの日照春秋分2階


春秋分のお昼前後に2階の床にくっきりとハイサイドライトからの日差しを見ることができます
ちょっと感動的でした
ハイサイドライトからの日照夏至
ハイサイドライトからの日照夏至
太陽高度の高い夏至には3階の吹き抜けから見下ろした視点からでも
2階の床に日照が見られます
ただしこれでは冷房負荷を大きくすることになりますので
ルーフバルコニーを利用して窓の外側から
すだれやシェードで日射遮蔽することで冷房負荷を下げるようにしたいですね
ハイサイドライトからの日照春秋分3階
ハイサイドライトからの日照春秋分3階

3階の階段を上がった先の吹き抜けに面した空間は物干しに使えるフリースペース
その先には奥行き1.5mのルーフバルコニー
どこからも見られることのないプライベートな空間です

5、最強のツール ルーフバルコニー+ハイサイドライトを超える敷地

最強のツールのルーフバルコニー+ハイサイドライトを手に入れて
どんな相談にも対応できると喜んでいました
ところがそうはいかないのが現実です
その後に日当たりシミュレーションのご依頼があったのが
下の物件です

ビルの谷間3
ビルの谷間3
南側隣地には最高10階建てのマンション
東と西には敷地の建物と同じ3階建ての住宅
画像は春秋分の日の12時の日当たりの状況です
東側隣家の壁に見られるように
南側マンションの影が1階から3階までかかっています
シミュレーションをしてみると日が当たるのは
3階の屋上4階レベルのルーフバルコニーだけ
これではハイサイドライトを付けても2階リビングには届きません
日照は無くても照度が取れればと採光のシミュレーションもご依頼いただきました
道路が8mと広いのでかなりの照度が出るかと思いましたが
道路向かい側にも10階建てのマンションがありました
照度も十分にない状態でほとんど1日中照明を付ける必要があることを
ご報告いたしました
長考の後「この土地の購入は諦めます」というご連絡がありました
思わず「良かったですね」と返信してしまいました
日当たりシミュレーションをご依頼くださる方ですので
日当たりを大切に考えるという価値観だと考えました

まとめ

狭小住宅で光井戸も2階バルコニーもできないような難易度の高い敷地でも
3階部分にルーフバルコニーを設けセットバックしたところに窓を付けて
2階のリビングのハイサイドライトにするという方法が有効であることが分かりました
どんなに難易度の高い敷地であっても多くの場合屋根の上は空に開かれているものです
3階にルーフバルコニー+2階リビングの吹き抜け付きハイサイドライトは
一部の例外を除いて多くの狭小住宅で日あたりを確保する方法になります

この記事を書いた人

atoriekojima