中庭のある家の間取り ロの字型コの字型住宅の日照・採光・動線・熱効率

日当たりシミュレーターの間取作造です
中庭のある家その中でもロの字型やコの字型の住宅は
日照・採光・動線・熱効率に問題が起きやすく
安易な気持ちで採用してはいけないと考えます

中庭での快適な生活がしっかり有効に機能するか?
他の日常生活よりもそれを優先するか?
リスクは十分に把握できているか?
これらのことを確認したうえで進めていただきたいと思います

日当たりシミュレーションの外壁日影動画や各階日照動画
動線図などの具体的な例を取り上げながら検証していきます



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1、日当たり3原則で見るロの字型とコの字型

1-1、日当たり3原則

日当たりの良い家を作るのに有効な考え方に日当たり3原則というのがあります

日当たり3原則
1、敷地内でできるだけ北に寄せて建てる(南の建物の影から逃がす)
2、建物の平面で南側に凸凹を作らないようにする(自己日影を防ぐ)
3、日当たりの良い南の壁に窓を付ける(日射取得)
というものです

日当たり3原則の1は、敷地内でできるだけ北に寄せて建てる(南の建物の影から逃がす)
下のような絵になります、この時に離隔距離が大きいと日当たりも良くなります

南の隣家から逃げる
南の隣家から逃げる

この原則に対してロの字型、コの字型の間取りがどうなっているか考えてみましょう

1-2、窓の南側に建物を建てるロの字型間取り


日当たり3原則のその1は「南の建物の影から逃がす」です
日当たりの良い建物を作るときには
南の隣家が作る影から逃げるように作ります

それなのになんで?
部屋の前に建物を建てなければいけないのでしょうか?
ロの字の家は部屋の窓のすぐ南側に家が建っているのです
間違いなく日当たりは悪くなります
それも自分でお金をかけて建ててわざわざ日当たりを悪くするのです
日当たりを大事にする考え方の人間からすれば理解不能のことです

1-3、部屋の両側に凸を二つも作って自己日影を作るコの字型間取り

日当たり3原則のその2は「建物の南面に凸凹を作らないようにして自己日影を防ぐ」です

部屋の前でなくても横に凸があっても自己日影ができます
凹型の底の部分の窓には午前中は東の凸の影が
午後からは西側の凸の影が掛かります

日照時間が短くなるのは仕方のないことです

コの字型の場合中央がリビングで片側が玄関片側が水回りというケースが多いようです
明るく快適であるべきリビングが自己日影のせいで日当たりが悪くなる
わざわざ日当たりを悪くしているのがコの字型の設計です

自己日影のないコの字型間取り

コの字型住宅でも自己日影が問題になりにくいのがUの字に上に開いた形です


北側に中庭を置く事で
建物全体は普通に南面に窓を付けて日照というお天道様の恵みを生かしながら
中庭ライフも楽しメルという方法です

1-4、中庭に開く

日当たり3原則のその3は「南面に窓を作る」です
ロの字型やコの字型の住宅は「中庭に開く」
というコンセプトと一体のことが多く
南側に大きな窓を付けることを避けた例が多いようです

南外観
南外観

ロの字型間取りの住宅は上の画像のように外からの視線や騒音を遮るように建てる例が多いようです
一方内観は

上の図のように中庭に対して大きな窓を付けて解放感を出すようにできています

隣家との離隔が取れずやむを得ず中庭をお勧めしたケースが1回だけありますが
信じがたいことに広々として日照やプライバシーに何の心配もない敷地で
ロの字型やコの字型を選択される方からのご相談が多いのが現実です

中庭ではなく南側の庭に広く大きな窓を取ればよいのですが
ロの字やコの字間取りの原理主義だと
中庭に開くことが重要なのでしょう

南側に日照のために大きな窓を付けてしまったら
ロの字やコの字間取りの「なぜそうするか」の根本理念が損なわれる
という考えは理解できなくはありません
個人の財産ですので自由に判断すると良いと思います

中庭の良さと日当たりの良さを把握して検討して
覚悟してロの字型、コの字型の間取りを採用することをお勧めします

2、採光から見たロの字型、コの字型間取り

2-1、採光・照度の原理と結果

採光・照度は
・窓の大きさ
・窓の前の障害物との距離
・障害物の大きさ
によって決まります

ロの字や、コの字の場合向かいあう面が採光の妨げになります
中庭に開くという基本原理からすれば外側に開くのは邪道かもしれませんが
日中無駄に点灯しなければならないような計画にはしたくないですね

2-2、窓で壁を強調するデザイン

ロの字やコの字型の間取りは
外部の影響を壁で囲って中部を守るデザインです
掃き出し窓のように大きな窓を外に向けて開けてしまうと
壁で囲われた安心感のあるデザインにはなりません
けれども
・スリット窓
・ポツ窓
といったデザインの窓は壁らしさを強めながら採光することが可能です

2-3、吹抜+ハイサイドライト、トップライトで改善

吹抜+ハイサイドライト、トップライトなどを用いることで改善できることもあります
下の画像はこの記事のために起こしたものですが
ロの字型間取りは日照に問題が起こりやすい
ということを認識したうえで
ハイサイドライトでの日射・採光取得する事を前提にして間取りを作る
というプロセスで出来上がったものです
ロの字型で間取りを作りました
日照・採光取得できるように窓を考えてください
というプロセスではできません

3、ロの字型やコの字型の間取りの日当たりシミュレーション

ロの字型やコの字型の間取りの日当たりシミュレーションのご依頼があると
・日当たりが悪く
・採光上も問題がある
可能性が高いということを設計者から説明を受けているはずなのに
なんで設計が終わるころになって日当たりシミュレーションをするのだろうか?
日照や採光に問題があるという事を説明されていないのだろうか?
と思います

けれども、何か切実なものが伝わってきます
頭ではわかっていながらも
「ひょっとしたら、日当たりの良い家になっています」という答えが返って
くるのではないかという期待かもしれません

残念ですが、今までそのような報告ができたことは一度もありません

3-1、間取り変更に進む方

設計者も十分にリスクを説明しないまま
最悪、設計者本人も知らないまま
中庭礼賛ブログのような記事を信じて
ここまで進めてきたのかもしれません

リスクの説明が十分でなかった方で時間的に変更可能な方は
普通の間取りに変更されます

設計変更は大変なことではありますが時間をかけて打ち合わせしたことは
形が変わっても生きてくることが多いので
致命的なほど時間がかかるものでもない
というのが長年図面の変更を強いられてきた経験から言えることです

3-2、間取り変更しないでロの字型コの字型のまま進む方

半数以上の方はシミュレーションの結果にがっかりしながらも
「このままの間取りで進めます」と判断されるようです

そのような方には
「日照だけが家作りの重要な要素ではありません
有意義な中庭生活が楽しめるのであれば日照が十分でなくても
豊かな生活が可能です」とお伝えしています



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4、日当たりシミュレーションの追加費用

ココナラの日当たりシミュレーション、採光・照度シミュレーションに
2022年7月9日からロの字型、コの字型住宅に関して
割増料金を設定させていただきました

オプションの説明文は
「ロの字型住宅、コの字型住宅に関しては良い報告ができないことが多く
心的負担も大きくなります恐縮ですが割増でご負担ください」
とさせていただいています

シミュレーションの結果報告で
「とても日当たりの良い住宅になっています」
と報告できるときには気持ちよく我が事のように嬉しく思います

ところが、苦労して作った間取りに
「日当たりは期待できません、日当たりを希望するのであれば
計画の在り方を再検討することをお勧めします」
と報告するのはとても苦しい思いをさせられます

ロの字型の極意匠性の高い間取りですので
日当たりに関して強く希望しているわけではないと思います
快適な空間であればそれでよいと思います

5、合理性に欠けるロの字型、コの字型の間取り

建築は合理的であるべきという価値観があります
合理性だけでなく豊かさがあればよいという価値観もあります
ロの字型やコの字型の場合の合理性に関して
壁量と動線の問題だけを取り上げてみたいと思います

5-1、ロの字型とI型の壁量比較

外壁面積

上の図のように1辺aの四角を並べてみます8マスの面積を囲うのに
I型だと12a、ロの字型は16aの長さが必要になります約1.3倍です
計画初期段階の方は「フーンそうなんですね…それが何か?」と思います

工事費に直結する壁面積

計画が進んで見積もりが出て、予算オーバーになった時をイメージしてください
予算に向けて1円でも安くできないか?と考えた時に
外壁面積が30%も大きい30%も余計にコストがかかるというのは
見過ごすことができない問題になるはずです

コストダウンのためにどれだけ図面を書き換えたか
その経験からできれば初めから合理性の高い計画にして
置いた方が良いと考えます

壁面積が大きくなるとランニングコストもアップする

壁面積に比例して変わるのは工事費だけではありません
冷暖房の熱が逃げていく量も同じ断熱の仕様であれば外壁面積が大きいほど大きくなります
冷暖房費がかさんでくるという事です

5-2、動線も長くなりがちなロの字型

動線長さ

先ほどと同じ図で申し訳ありません
赤のマーカーで書いた線を動線とすると
I型の方がロの字型の間取りより長くなります
動線は間取りの作り方で全く違ったものになりますが
通り抜けられない外部を持つロの字型の方が長くなりやすい傾向にあるだろうことは
無理のない推論だと思います

6、ロの字型コの字型間取りにするのはカーテンがいらないから

沢山の間取りを作っていると合理的な方法が身についてきますその立場からすると
合理性の少ないロの字型コの字型間取りにする根拠が希薄に思えてなりません

「どうしてロの字型コの字型間取りにしたのでしょうか?」とお聞きすると
多くの方が「カーテンがいらないから」というお答えです
それはそうかもしれません
合理性の欠けるロの字型コの字型を選択する根拠としてはあまりに弱いもののように思います
プライバシーを守る方法はほかにもたくさんあるはずです

まとめ

立て続けにロの字型コの字型の中庭のある住宅の日当たりシミュレーションのご依頼がありました
ロの字型コの字型の間取りを選択した理由が「カーテンがいらないから」というお答えに
釈然としない気持ちになります
日当たり的には大きなリスクとなります
その他にも、建築コスト、ランニングコスト動線などデメリットも起こりやすくなります

中庭での快適な生活がしっかり有効に機能するか?
他の日常生活よりもそれを優先するか?
リスクは十分に把握できているか?
これらのことを確認したうえで進めていただきたいと思います

図面から一目で解る日照動画を作り改善案を提案します 「こんなに日当たりが悪かったなんて」と後悔したくないあなたに

この記事を書いた人

atoriekojima