間取り迷子から抜け出す方法・家作りの目的の明確化 一級建築士が解説

家作りで納得いく間取りに行きつかない
「もう何とでもなれ」と投げ出したくなるお気持ち良く分かります
工務店の担当は何を言っても「できません」
「持ち帰って検討します」と言って出てきた間取りが
理想とは程遠い前よりおかしなもの
そのくせ「早く決めてください」
契約してしまったのでキャンセルもできない
「間取り迷子」という言葉が腑に落ちる気がします
間取り迷子から抜け出す方法をお伝えします

間取りでお困りの方へセカンドオピニオンを提案します 住宅メーカーや工務店から提案された間取りに納得できない方に



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なぜ間取り迷子になったのか

解決方法の前に経緯を思い出してみましょう

伝え忘れた家作りで最も大切なこと=どんな暮らしがしたいのか

家作りで最も大切なことは「どんな暮らしがしたいのか?」です
「こんな生活がしたい」を明確にしない事が
間取り迷子の入り口です
工務店やハウスメーカーはプロなんだから
希望をかなえてくれるはずと思って
なんとなく必要な部屋名と畳数などを伝えて間取りを依頼
工務店の間取りがイマイチだと
「こんなのだったら自分の方がうまくできる」
と思いますね
そこに落とし穴があります
部屋の並び替えパズルにはまることです

部屋の並び替えパズルにはまる

間取りソフトなどを買ってやってみるとゲームよりも楽しいと思います
楽しいうちは良いのですが
工務店から構造が~、予算が~、社内基準が~と指摘されると
ちょっとがっかりしますね
良い設計者だと意図を汲んでブラッシュアップできますが
ローコスト系ハウスメーカーや
「家は機能」という大手メーカーなどは
プランニングのできる建築士がいないようなのです
社内基準を決めた根拠や仕組みが分からないまま
当てはめようとするので
より深い迷路に入り込みます
間取りが上手くいかないと
「そうだネットで調べてみよう」と思います
これが次の罠です

情報のクモの糸に絡まる

蜘蛛の巣
蜘蛛の巣
ネットで得られる情報は断片です
それも発信者の都合によるものです
「家作り体験談」的な記事の多くは
特定の商品サービスを紹介する目的だったりします
情報が断片的で家の全体像がないままに部分が切り取られて
メリットだけが独り歩きすると
後で述べる「原理主義」となります
さらにおせっかいなグーグルが
同じような情報だけを選んで提供してくれるので
ますます深みにはまります
迷路から抜け出す方法はSNSでは手に入らないと考えた方が良く
こじらせることばかり増えると考えてください
迷子になる原因は
1、どこが目的地なのか分からない
2、自分がどこにいるかわからない
の二つです

迷路から抜け出す2つのステップ

間取り迷子が迷路から抜け出す方法は
目的地を明確にすることです

ステップ1:「どんな暮らしがしたいのか」をもう一度確認すること

小さくても幸せな家
小さくても幸せな家
家作りの目的を明確にして迷子の原因1をクリアしましょう
ライフスタイルというと抽象的になります
新しい住まいでも生活するのはあなたのご家族です
今の暮らしの延長上のより快適な姿をイメージしてください
仕事の日はどのように過ごすか
休みの日にはどのように過ごすか
くつろぐときにどんな感じのソファーが良いのか
ソファーが無くても良いというのもアリですね
食事をするときにどんな感じのダイニングテーブルが良いのか
リビングやダイニングとキッチンや庭との関係はどんな形が良いのか
キッチンメーカーの写真にあこがれるのではなく今の生活の延長として
イメージしてみてください
 
将来もイメージしてみてください
5年後はどんな家族構成でどんな暮らしになっているだろうか?
10年後は?20年後は?30年後は?
子供室がそんなに大きくなくても良いかもしれないと
気づくかもしれません

ステップ2:設計条件を見直すこと

キャンディビン
キャンディビン
多くの方が設計条件に入れて設計を困難にしている問題があります
SNSやカタログに書いてあることを
それが成り立つ条件や根拠やデメリットを確認しないで
良いと思い込んで他の考えを受け入れないことから
個人的に「原理主義」と呼んでいます
思いつくままに挙げると
・家相原理主義
・LDKは20畳以上必要原理主義
・ダイニングテーブル横並びキッチンが良い原理主義
・SIC2畳以上、FCL3畳以上、パントリー1畳以上、洗濯室3畳以上必要原理主義
・洗面脱衣分離原理主義
・回遊式動線原理主義
・子供室6畳寝室8畳原理主義
・リビング階段にドアを付ける原理主義
などがあります
これに対して現実に即して考えることは「合理主義」と考えます
間取りづくりを旅に例えると
目的地は「快適なLDKで家族が集まってワイワイしながら楽しく暮らしたい」
といったことだと思います
勘違いしやすいのは
「LDKを20畳以上にする」という手段を目的地と錯覚することです
同じように「回遊式動線」「洗濯室」など家事負担を軽減しようとする
手段がいつの間にか目的化してしまうと
そこに生活する姿が見えなくなって
部屋の並び替えパズルにはまることになります
間取りはそこに暮らす人の生活を映し出すもので
パズルではないと考えてください
具体的には考えてみましょう

LDKの大きさ

LDKにご家族がくつろいだ姿をイメージして
必要な家具をレイアウトしてみて
快適に過ごせる形を具体的に検討してみてください
4~5人家族だと18畳位で収まりませんか?
20畳が良くて18畳が悪いというほど大きな違いはありません
これだけで間取りの自由度が大きく変わります

収納の大きさ

収納は最も合理的な考え方のできる部分です
SICやパントリーの大きさは中に置くものの具体的な量を
棚の長さで検討してみてください
クロゼットの大きさは今お住いの家のハンガーパイプの長さを計ってみて
新居で必要なハンガーパイプ長さを想定してください
ブログの筆者の都合の「何畳が良い」を自分の家に当てはめないで
自分の生活を計測して決めるようにしましょう

このように上に箇条書きにした原理主義に当てはまるものがあれば
合理的に検討して設計条件を見直してみてください

資金や敷地に余裕がないと
何かを手放さないとまとまりません

お菓子のビンに手を入れて沢山掴んでしまって手が抜けなくなる状態ですね
いくつかに絞って他を手放すとするりと抜けます
つかんだ物を手放さないと抜けることはありません

追記 間取りを客観的に評価してみる

迷子になる原因の2つ目の「自分の位置が分からない」を
クリアしていきましょう

家に求められる要件の8つの評価軸

建築士はどんなことを考えてプランニングしているでしょうか?
沢山のことを考えてプランニングしますが
家に求められる要件を8つの評価軸に整理してみました
1、経済性=予算、ローン、光熱費
 この裏付けがないと豊かな暮らしは難しくなります
 コンパクトな家はランニングコスト、イニシャルコストが抑えられます
 日当たりの良い家は光熱費が少なく済みます
2、防災=自然災害、火災
 ハザードマップを確認して自然災害の危険性とできる対策を考える
 隣家が火事の時の延焼を考えて離隔距離を取る 
3、安全性=構造、防犯
 耐震等級3、UFO-eなど構造への配慮
 防犯ガラス、面格子、スリット窓など防犯対策する
4、快適性=冬暖かく夏涼しい家の設計、騒音対策を考える
 日当たりは明るさだけでなく温熱効果もあります冬暖かく夏涼しい家にする基本です
 道路や近隣からの騒音を考え距離を置く
5、利便性・機能性=家事労働の低減、動線、収納
 動線チェック、収納の量と位置
6、耐久性=長持ちする家
 雨漏りしにくい、メンテナンスのしやすい家にする
7、デザイン性=バランスの良さなど
 安定性、快適性につながる
8、社会性=プライバシー、近隣、法律
 道路や近隣からの視線など
 建築基準法他
このような評価軸があると思います
「あちらを立てればこちらが立たず」
で全てに満点が取れるわけはありません
全体を出来るだけ満足するようにバランスを考えるのが
設計の仕事です
問題はどこかに破綻があると建物の評価が大きく下がる
と考えなければいけません


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まとめ

間取り迷子にならないため
間取り迷子から早く脱出するためには
どんな暮らしがしたいのか」をもう一度確認し家作りの目的を明確にすること
目的と手段を混同しないで設計条件を見直す
この二点です
これをすることで
間取り迷子から抜け出せるだけでなく
「どんな暮らしがしたいのか」に沿った
より高いレベルの間取りにすることができます

間取りでお困りの方へセカンドオピニオンを提案します 住宅メーカーや工務店から提案された間取りに納得できない方に

この記事を書いた人

atoriekojima