「日照」と「採光」と「部屋の明るさ」の違いを建築士が実例で解説

「日照」と「採光」と「部屋の明るさ」何となく違う様ですがどこがどう違うのでしょうか?
実はそれぞれの内容は明確に違います
その違いが分かると
・日照を有効利用する方法
・採光を確保する方法
・部屋の明るさを確保する方法
も分かる様になります
画像や動画で具体例を挙げて説明します



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日照

日照は陽射し(ひざし)で太陽から来る直接の光の事で直射日光とも呼ばれます

住宅で日照と言うと窓から入って来る直射日光の事を指しています

太陽の軌道

日照には太陽の動きが影響しています

地上から見た太陽の軌道は下の絵のようになっています

太陽軌道

春秋分では真東から日が出て真西に沈みます

冬至には東より少し南によったところから日が出て真西より少し南によったところに沈みます

軌道は春夏秋よりも低い位置を通ります

反対に夏至には東より少し北によったところから日が出て真西より少し北によったところに沈みます

軌道は秋冬春よりも高い位置を通ります

夏暑く冬寒いのは日照時間と日射の角度が影響しているのですね

家の日照

家に入る日差しを上から見ると下の動画のようになります

冬至の日照

南向きの家で日照を遮るものが無い場合

掃き出し窓から差し込む日差しは8畳間の部屋の奥まで届きそうなくらい

部屋の奥まで届いていますね

ネコはこの陽射しが大好きで窓の近くに陣取って昼寝をすることでしょう

夏の日照

それに比べ夏の日照はどうでしょう

窓の近くに少ししか日差しが無いことが分かりますね

日照を意識して窓を付けると夏涼しく冬暖かい家ができる

太陽の動きを意識して窓を付ける事が大切です

南の窓は太陽の通る方向なので日照が得られます

太陽高度が低い冬には部屋の奥まで日が差して

太陽高度が高い夏には窓に近いところにしか日が差しません

夏涼しく冬暖かい建物にするためにはとても便利な仕組みです

「日照チェック」は太陽の直接の光がどの様に窓から入ってくるかのチェックで

部屋の明るさと関係はありますが

部屋の明るさそのものではありません

採光

 

曇り空
fujikiseki1606さんによる写真ACからの写真 

採光は太陽からの直接の光だけでなく空気中で乱反射した光

いわば空の明るさの光が窓から入ってくるものと考えてください

上の写真のように太陽が出ていなくても明るい光が窓から入ってきます

全く日の当たらない北側の窓でも部屋を明るくすることが出来たりする事を

イメージするとわかりやすいと思います

「採光」に関しては「日照」と違って

不自由の無い範囲で適切に選択的に考えることが大切です

洗面所を明るくしたいと考えてむやみに大きな窓を作ると

寒かったりコストが掛かりすぎたりする問題が起こります。

 

下の採光斜線に関しては

狭小敷地で1階の居室が隣地に面している

というような方だけに関係しますので

気になる方だけお読みください

採光斜線

設計の内容をお客様に説明していて

もっとも伝えにくいのが建築基準法の採光についてです

「窓が有っても隣地との距離によって採光が有効ではない」というケースががあるという話です

窓を開けると隣の家の壁に手が届くというような環境にある窓では

隣地境界からの距離によって窓の採光が有効かどうかを考えようというものです

下の画像はユーローベリタスさんのホームページよりお借りしています

採光斜線
https://www.bvjc.com/news/news_detail/180425_01.html

「S」=非居室扱い

部屋についている窓が採光上有効とならなかった時には

建築基準法上「居室」としては認められません

マンションや建売の広告などを見ると

3LDK+Sというような表示を見ることが有ります

この「S」が法律上は非居室=倉庫扱いになる部屋です

2LDK+3Sの木造3階建ての家

都心の路地状敷地に計画された3階建ての建物で

1階にある部屋が全部「S=非居室扱い」の図面を見たことがありました

「6帖の倉庫が3つも必要な家ってどうよ?」

と突っ込みたくもなりましたが

採光が無くても照明器具があればそれほど不便ではない

という事もあるのでそれでも通るのかも知れません

確認申請でどう扱われるかはそれぞれの

検査機関で異なるかも知れません

部屋の明るさ

部屋の明るさは

「日照」や「採光」だけで決まるのではなく
壁、天井、床やカーテンや家具の色によっても変わってきます

先ほど日照の動画でご紹介したお宅のリビングを例にとってお話します

白系の配色

下の画像は壁、天井、カーテンを白系統で、床や家具は明るめの木質系にしています

レースのカーテンにしておくと床に日差しが写り込みます

照明器具は若干光らせています

この部屋の仕上げを少し変えてみます

ダーク系の配色

正面の壁をダークなアクセントカラーに

床とドアと家具をダーク系の材料に、カーテンもシックな茶系に変えると

ダーク系配色

大分変わってきますね

明るい部屋にするためには明るい色の仕上げ材を選択すると

効果があります

エクステリアの効果

隣の家や自宅の壁の色やテラスの床の色なども影響してきます

ダーク系外構

窓の外に暗い色が多いと部屋が暗く見えます

ライト系外構

窓の外に明るい色が多いと部屋が明るく見えます

それだけでなく壁や床からの反射光が部屋に入ってきて部屋全体が明るく成ります

部屋が明るく感じるのは見えている物からの反射を見ているからで

反射が少ない暗い色のインテリアにすると

照明器具の能力には関係なく暗く感じます

古民家レストランでテーブルの照度を上げても部屋は暗かった

昔古民家を改築した蕎麦屋の設計をしたのですが

天井も壁も古いものをそのまま使ったので

部屋がとても暗い感じになりました

テーブルの照度は十分で食事をするのには困らないのですが

部屋全体が暗い感じになります

障子を入れて白い面を増やすことで改善しました

ハイサッシ・ハイサイドライトの効用

同じ幅の窓でも高さが天井近くまでのハイサッシを使うと

部屋の奥まで陽射しが入ります

また、天井の一部を高くしてハイサイドライトを付ける事でも

部屋の奥まで日差しが入るようにできます

ハイサッシ・ハイサイドライト

ハイサイドライトに関しては下の記事に詳しく書いていますので

ご参照ください

ハイサイドライトとは?有効な利用法、デメリットと対策(建築士の道具箱)

トップライトは普通の窓の3倍の採光

暗くなりがちな建物の中央の部分にどうしても光を入れたいという時には

トップライトを使うという選択肢もあります

トップライト使用前使用後

写真で一目瞭然、何の説明も要りません効果抜群です

若干コストが掛かるというデメリットがありますが

建築基準法でもトップライトからの採光は

一般の窓開口からの採光の3倍の効果を認めています

トップライトに関しては下の記事に詳しく書いていますので

ご参照ください

トップライトの魅力!メリットとデメリットとその対策(建築士の道具箱)



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まとめ

「日照」と「採光」と「部屋の明るさ」について書いてみました

あなたのご希望に沿った

日当たりが良く明るく楽しい家づくりの参考になればうれしいです

建築にはまだまだたくさんの方法が有ります

また沢山の技術やアイデアが生まれてきています

これからも引き続きいろいろな事例を

紹介していきたいと思います

最高の選択

 

この記事を書いた人

atoriekojima