「耐震シミュレーションwallstatは必須アイテム」の記事を作りながら様々なことに気づいてしまいました
・耐震等級1で設計するのは困難
・耐震等級3でも中破の被害を受けることが想定さる
そうなると多額の改修費用が掛かる
・重心と剛芯をそろえるのがポイント
・耐震等級3以上かつUFO-E利用で小破に抑える事が可能
という事です
耐震等級1で設計するのは困難
耐震等級3をクリアーするよりも耐震等級1に下げる方が難しいと感じました
下の画像は耐震等級1のモデルが倒壊している状況です
グレーや黄色の壁の間に工事途中のように不自然に壁が抜けているところがありますね
ここに壁を入れてしまうと耐震等級1を超えてしまうので仕方なく壁を外しています
外壁下地は構造用合板がスタンダード
構造用合板が使われだしたのは今から40年くらい前
私が設計業界に入ったころでした
モルタル下地のラスカット
そのころはまだモルタル塗り全盛のころで
モルタル下地が板張りからラスカットに変わる時でした
以前は図の左のような幅の狭い板材を張ったうえに
防水シートとラス網という金網を張ってそこにモルタルを塗っていました
出典:近畿壁材株式会社
ラスカットは構造用合板にモルタルが付着しやすくなるような
凸凹を付けたもので構造強度も上がるという事で多用されました
構造用合板+サイディングはスタンダード構法
最近ではモルタル塗りは少数派になって
構造用合板を張って通気層を設けてサイディングを張るのがスタンダードになっています
どちらにしろ外壁の下地には構造用合板を使うのは当たり前の事となっています
構造用合板張りだけで耐震等級1の1.5倍~3倍
さて構造用合板を下地に張るとどれくらいの強度になるでしょう
構造用合板を全面に張るだけで耐震等級1の必要壁量の
1.5倍から3倍近い壁量が取れることが分かります
現在建てられている多くの建物は
耐震等級1は簡単にクリアー出来ることになります
(プランが悪くなければという条件付きですが…)
筋違を加えて耐震等級3に
壁下地が構造用合板の上記のケースを耐震等級3するにはどうすれば良いでしょう
2階の壁量は足りています1階の壁量のが不足していました
試しに図のように4隅に筋違を入れて確認するとそれだけでクリアできました
これをJMA神戸という地震動で揺らしてみると
・崩壊はしない
・大きな開口のある1階の南面と開口の数の多い1階の北面に中破がみられる
という結果になりました
このオレンジ色の中破というのを無くせない物かといろいろやってみました
一般的ではない工法で構造用合板を張ったり筋違を設けたりすれば可能ですが
一般的な方法では難しいことが分かりました
耐震等級3以上の壁量を設けても中破は免れないと考えました
そこで考えたのが
耐震・制震・免震・減震その解説とおすすめ~地震に強い住宅①~
で検討した減震UFO-Eの採用です
中破にならない耐震等級3+UFO-E
wallstatには制震ダンパーメーカーから資料提供があるものに関してはダンパー設けた場合の検討が可能です
UFO-Eに関してはデータ提供が無いので正式な検討できませんここではメーカーの実験値の入力加速度600galがUFO-Eを設置すると
応答加速度400galになるというデータから地震力の倍率を0.7に設定して
検討してみます
これだと黄色の小破は起こりますが
オレンジ色の中破は発生しません
wallstatでUFO-Eを採用する場合の計算が出来るようになるまでは正確なデータとは言えませんが近似的に利用することは可能だと考えます
まとめ
私が設計を始めて40年以上たちます
私自身も設計した建物も大きな地震で被害を受けたことがありません
耐震設計はどこまで必要か?と考えると
地震に遭わなければ必要ないとも言えます
一方で東日本大震災、熊本大震災とかつてない大きな地震があり
その恐ろしさを目の当たりにしました
wallstatで解析して見ると耐震等級3はそれほどかけ離れた内容ではなくコストもかかりません
UFO-Eも地震で中破を受けた場合の改修費に比べたら安価なものです
耐震等級3にUFO-Eを組み合わせた耐震性は
標準設計レベルで抑えておきたいものだと考えております